2011年10月17日

間・交通・生成・芸術・成仏(2) (篠原資明「あいだ哲学論考」)


「さびしさ」は、他者とのまじわりから断ちきられたときの孤独感、そして過去から断ちきられたときの無常感を意味する。しかし、孤独感にせよ無常感にせよ、いずれの「さびしさ」も反交通という様態でしか考えられてはいない。ここでいう反交通とは、他者との交通遮断、過去との交通遮断のことをいう。しかし、現在と過去のあいだを、直線的な時間観念にもとづく反交通で割りきるのではなく、現在と過去との共時性にもとづく異交通の様態から再考すれば、どうなるだろうか。ここで異交通とは、異質性を保持しつつ、さらなる異質性を生成させる様態をいう。現在と過去のあいだ[?不詳]は異質でありつづけ、異質でありつづけるからこそさらなる異質性を生成させる。[?不詳]すなわち、現在は別様[?定義なし]となりつづけ、過去もまた別様となりつづけよう。このように別様になりつづける〈いま〉こそが新しいのであり、別様になりつづけるからこそ〈かつて〉は、つねにすでに、さびしいのである。[?不詳]

無常を語るとき、「無」に重きを置きがちだ。そうすると、常すなわち永遠なる存在そのものと、無との対立を前提としかねまい。そして、常なる存在そのものは、「あこがれ」をかき立てるのに対して、常ならぬ存在は「さいなみ」の対象でしかなくなる。「さびしさ」は常ならぬ身の「さいなみ」の別名ともなる。このような考え方の根底には、存在と無のあいだ、いいかえれば、ありなし間を特権化しがちな根強い傾向がひかえていよう。ありなし間を特権化したとたん、ありなし間の単交通を想定せざるをえなくなり、この世の不完全な存在をさいなむ一方で、完全な存在をあこがれるという構図を、いわば運命づけられてしまう。

ありなし間の単交通的な生成論を哲学的に推しすすめたのは、西洋の伝統的な形而上学であった。さらにいえば、いまや西洋に限るまい。人間の思考と行動が、あたかも無を前提としているかのようにとりおこなわれるからである。たとえば、未来という無に対して、いくつかの可能性を描き出し、そのひとつを実現するというふうに思いなす。また、ものを作るとき、秩序のないところに秩序を与えるというふうに思いえがく。だからこそ、ありなし間の単交通的な生成論は[「多くの人にとっては」か?]受けいれがたい。というのも、その種の理論は世界の生成の原点に、あまりにも人間的な知性[?不詳]を想定してしまっているからだ。

しかし、現在と過去のあいだの異交通、いいかえれば、いまかつて間の異交通はそうでない。どんな生命もどんな物質も時間の厚みを持ち、その厚みが異交通の実質である。[?不詳]だからこそ、世界は差異をもち、新たなものとして生成する。[?不詳]

「さびしさ」を突きつめていくとき、ふたとおりの生成論から選択をせまられる。ありなし間の単交通的な生成論をとれば、「さびしさ」は「あこがれ」の対極としての「さいなみ」へといたり、無常は悲惨へとおとしめられる。いまかつて間の異交通的な生成論をとれば、「さびしさ」は「新しさ」と共生成的な[?定義なし]「さびしさ」へと深められ、無常は変化の一面となる。ありなし間の単交通的な生成論は、そもそも生成を説明できない生成論である。[?根拠の提示なし]


空海の詩「山に遊んで仙を慕う詩」には、「さびしさ」という語に含まれる三つの段階が示されている。まず、孤独感が無常感によって強められる「ひとり無常」の段階。これを寂1と呼ぶ。つぎに、無常の共有により孤独感が癒される「みな無常」の段階。寂2と呼ぶ。さらに、無常とは生成変化の重要な一面にほかならない。したがって、第三に「みな生成」の段階がくる。寂3と呼ぶ。寂1から寂3への深まりは、自然を友とする道を切り開く。それは風雅の道である。芭蕉にとって風雅とは、生成変化する自然に身も心も託しきることだった。現在と過去のあいだ、もしくは、いまかつて間に立ちいたり[?不詳]、その〈あいだ〉でこそ生成変化は起こりうるものと[芭蕉が?]考えたのである。不易なものとはいまかつて間であり、その〈あいだ〉でこそ、事象は流行[変化]する。そうであればこそ、生成変化の感取のありよう[?不詳]は、「新しみ」と「さびしみ」とに分極化せざるをえない。さらに一般化して風雅の定義を試みるなら、風雅とは自然を友として新しみつつさびしむことだといえる。
posted by 三好 at 05:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 哲学書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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